足壊疽を取り巻く環境と問題

下肢の循環不全に伴う足壊疽(重症下肢虚血)の治療には多科多職種で混成された高度な専門チームが必要になります。そのため急性期の治療は医療圏の中核となるような総合基幹病院で行うことになります。しかし基幹病院といえ潤沢に人材が揃っているわけではなく、十分な専門チームの立ち上げが難しいケースが大半です。また、足壊疽治療には創部が治癒するまでの長期間にわたって日々のケアや定期的な診察が必要になりますが、手間と時間がかかる足処置はときに多忙な基幹病院の外来を占拠してしまいます。加えて、重症下肢虚血が増悪する患者さんの多くは透析を必要としていることが多いのですが、基幹病院の透析ベッドを長期にわたって埋めてしまうことは現実的ではありません。

このような現状により足壊疽治療は長期に及ぶと行き詰まってしまうケースが後を絶ちません。こうなると患者さんの治療に対する意欲が低下し、下肢切断の大きな要因になってしまいます。

私たちの取り組み

このような状況を改善するべく、私たちは地域の中核基幹病院、そして多くの下肢虚血患者さんを抱える透析クリニックとの連携を強化し、疾患の啓蒙活動や早期発見、適切かつ継続的な治療とフォローアップができる体制の構築を始めました。

このような複数施設間の連携を強化することで、これまでは時に「その場しのぎ」「中途半端」な形で終わらざるを得なかった重症下肢虚血の治療を、長期的かつ理想的な体制で『歩ける足を守る』治療ができる環境へ変えていくことを目指しています。

当院からは透析施設などへ足回診訪問し、下肢虚血の初期診断やフットケアの指導を行ってます。また基幹病院で急性期治療が行われた患者さんについて、当院の外来で長期的な創部処置や定期的な下肢の評価を実施しています。毎週の症例検討会に参加し、時に非常に専門性が高い手術に際しては出張して合同で治療に当たることもあります。

今後、靴装具やリハビリに詳しい整形外科、足壊疽患者を多く抱える糖尿病内科、皮膚病態に詳しい皮膚科など、より多くの診療科施設との関係を強化していくことで、当該地区の足壊疽患者さんがより良い治療を受けられる体制を作りたいと考えています。