糖尿病患者さんや透析患者さんの足に生じたキズは非常に治りにくいことがよく知られています。これは血流障害や神経障害など、不可逆的な要因が原因となっているためであり、時に感染や壊疽へと進行して切断を余儀なくされることが少なくありません。「なんともないから大丈夫」と気に留めない方が大半ですが、神経障害によって痛みが感じにくくなっていることが多いため『痛み=重症度』ではないことをまず知って頂きたいと思います。

糖尿病+透析の症例

長期透析の症例

糖尿病の症例

このような足切断のリスクが高い患者さんでは、以下のような管理が重要になります。

  1. 創傷発生の予防
  2. 足病の早期発見
  3. 創傷発生時の適切な対応

当院では爪や皮膚軟部組織に問題を抱えてご来院頂いた患者さんだけでなく、定期通院されている糖尿病の方や高度動脈硬化の方に対しても積極的に包括的なフットケア処置や足部管理の指導を行っています。


しかし現在、このような難治性足部創傷に対する認知度はまだ十分ではなく、患者さんだけでなく医療関係者にもあまり浸透していません。そのため早期発見や予防の啓蒙活動が積極的に行われている施設はまだ多くありません。また、治療に際しては複数の診療科、専門の看護師、リハビリ、透析、栄養管理など多岐にわたる部門で作られた専門チームが必要になりますが、特に都市部以外の地域では満足のいくチームが作れるほど潤沢に人材が揃っている施設が少ないという問題に直面しています。加えて治療後の再発予防対策を受け入れることが可能な施設も少ないため、せっかく治療が成功しても高い確率で再発してしまいます。

この問題を解決すべく、私たちは地域病診連携による重症下肢虚血治療への取り組みを始めました。これまで一般的には単独施設での発見/治療/予防対策が行われてきましたが、私たちは「地域中核基幹病院での急性期治療」「透析施設での足回診とスクリーニング」「当院での創部管理と再発予防」などを軸とした、複数施設の協力体制を作ることで足部壊疽に対する良質なを提供し、これまでは十分な治療を受けることが出来なかった足部壊疽の患者さんの「歩ける足を守る」活動をしています。

▷ 包括的地域病診連携での重症下肢虚血治療の取り組みについて